カノンという街が好きだった

カノンという国が好きだった

カノンという在り方が好きだった

 

だから私は、この街が国が在り方が何時までも続けばいいと思った

 

変わらない事は罪

変わる事は罰

 

罪と罰

私ならば、罪を背負い罰を受けようと思う

例えそれが間違っていたとしても

例えそれが誰も望まない事だとしても

 

私が望むものは常に変化する

だから私も変わる、変わらなくてはいけない

不完全こそが私であり、不完全こそが人間だから

変わることは苦痛ではない

 

でも一つ、苦痛を挙げるとするならば

 

 

 

 

刻は繋がってない

 

 

 

 

ロードナイツ

 

第三話−U

「刀持つ戦女」

 

 

 

 

「連続誘拐事件?」

 

言葉に表すと六文字、言葉に出すと十一文字。

それでも私、水瀬名雪はそんな短い言葉を理解できないとばかりに聞き返した。

 

「そうです、名雪様には申し訳ないのですが出来れば協力を仰げればと思いまして……」

 

そう言って頭を下げる女性、名前は"神咲小夜"さん。

お母さん、水瀬秋子の護衛役でもあり茶色がかった黒髪でポニーテールにしているのが特徴の人。

私も見立てでは任務以外は良く喋り意外に感情豊かであり、それでいて真面目な人だ。

嘘をつくことが嫌いのようで、苛められている人を見ると助けてあげたくなる優しい性格。

任務時以外はよく遊んで貰った経験があるから人間嫌いではなく人間好き。

でも弓兵なだけあって単独で行動する事が多いみたいだ。

お母さんの護衛役なだけあって魔法使いでは無いが戦闘能力はかなり高い。

恐らく適した場所、空間などがあれば十分川澄舞ともやり合えるだけの実力は持つ。

単純な戦力差は圧倒的に舞さんが勝っているが射程、手法が上手く決まれば舞さんを難なく倒せてしまうだろう。

……まあ舞さんがそれほど実戦慣れしていない事も大きな理由である。

 

「うぅ〜、様はやめてって言ってるのに〜」

「う……、で、でも一応秋子様のお嬢様ですので」

「名雪でいいよ〜、偉いのはお母さんであって私はただの村娘だよ〜」

「いや、それは違うような……」

 

私は昔から小夜さんとは知り合いなので結構打ち解けている。

でも外では何故か小夜さんは無口になってあまり会話できなくなってしまう。

何でも兵の模範となる為には民の前で常に気を張ることが〜云々……らしい。

カノン騎士団の中でも歳が近く街中で会った時もよく声をかけるのだが何時も何処か素っ気ないのだ。

そのくせお城に帰ると「先程はすみませんでした」っと謝りに来る不器用さん。

 

「兎に角、私の名前は名雪であって名雪様じゃないよ〜」

「えっと……では、二人きりの時は名雪と呼びますから」

「う〜、分かった……約束」

 

私が納得するとようやく小夜さんは笑ってくれた。

……っと、そういえば話がズレてしまったがさっき何の話をしていたんだっけ?

 

「連続誘拐事件がどうしたんだっけ?」

「あっ……そうでした、最近カノン国内で誘拐事件が多発しているのです」

「―――誘拐事件」

 

嫌な記憶が蘇る、私は頭を軽く振って切り替える。

連続誘拐事件がカノン国内で起こっている、だから私の力を借りたいと小夜さんは言った。

だけどおかしい、何故私にまで協力を仰いで来たのだろうか?

確かに小夜さんは例外として私の……まあ、本性を知っている少ない一人だ。

だからこそ私に依頼してくるのはお門違いといった所だと思う。

私はこの力をひけらかす気も多用する気も無い。

万が一正体が割れたとしたら、大変な騒ぎになるに違いない。

その事は小夜さんが一番良くわかっていると思ったけど……。

 

「何か訳あり……かな?」

 

カノン騎士団隊長格である神咲小夜が私に頼ってくる理由。

保険……という訳ではなさそうだ。

何しろ私が動くとなればそんな簡単な任務になる筈がない。

それに、恐らく小夜さんがこんな事を言い出すとなれば……もっと上の人間が絡んできている。

恐らく―――私に直接指示しなかったのは、一種の親離れでも狙っているのだろうか。

確かに、依存は大きいかもしれないがこんな突き放すような事しなくてもいいのに。

 

「はい、これは極秘ですが……狙われているのは貴族の女の子達です」

「……貴族の…"女の子"?」

「察しの通り、大人ではなく子供、それも年端もいかぬ子供ばかりです」

 

成る程、確かにそれは王国側としては極秘にしたくなる事実だ。

でも……貴族の女の子を狙った連続誘拐、何を狙っているのだろうか。

わざわざ貴族に的を絞っている辺り怨恨の可能性もある。

まあ他にも色々ありそうではある、戦争終わりでみんな浮かれている状態だから隙も多いのだろう。

 

「現在までに11人、被害に遭っています」

「……多いね、流石に」

 

怨恨にしては数が多すぎる。

しかもここまで続けて誘拐しておいて未だに捕まえられないという事は、余程の人物が関わっているのか。

でも、これで動かなくちゃいけない理由が二つほど見つけた。

一つは、この任務には上の人間の指示が関わっている。

ならば私に拒否する理由はないし、実戦を多く経験しておくことも悪くない。

それに、二つ目の理由としては……犯人が許せなかった。

何のために誘拐した何て知らない、でも―――許せない。

私はカノンが大好きだ、みんな大好きだ。

だからこそ、猛毒を持ってくる人間は例外なく許せない。

悪いことをする人はお仕置きしなくちゃいけない、それが常識だ。

 

「分かった、学園があるからちょっと時間無いかもだけど出来る限り協力するよ」

「ありがとうございます、名雪さ……いえ、名雪」

「お任せ……だよっ」

 

 

 

 

突然ではあるが、私は実は学園の先生達からは気に入られている。

次元使いの娘だということもあるだろうし、比較的香里達には敵わないが素直に授業を聞き、魔法を習得している。

やはり教える立場としては生徒が成果を上げる事が嬉しいのだろう。

だから私はよく先生達からお願い事をされる事もしばしばある。

今日もアーレン先生のお願いで一人の少女に学園内を案内することになった。

アーレン先生によるとその少女は途中入学の生徒でありカノンには外来の魔法使いとして登録したらしい。

外来の魔法使いは国内の生徒達にしたら興味の対象ではあるが畏怖の対象でもある。

意外と閉鎖的な学園なのだ、魔法使いの学園というものは。

だからこそ、何故か私にこういう役が回ってくる。

嫌なわけでもないけれど、正直今はあまり時間が無いので困ることは確かだ。

誘拐事件は念のために……"専門家"にはもう連絡したけど何時動けるかはまだ未定らしい。

まあ確かに今の時期は色々と忙しい筈だからあまり無理は言えない。

そんなこんなで実際断っても良かったのだが、誘拐事件の方は学園生活に無理がない程度に関わろうと決めていた。

だからここで無下に断る事も少し違うなと思い直し、引き受けることにした。

 

「えっと……確か彩夏ちゃんだっけ?」

 

私は教えて貰った名前を反芻して顔写真入りの簡易プロフィールの流し見る。

あまりこのプロフィールでは詳しいことはわからないが手助け程度にはなる。

このプロフィールは本人が公開してもいいと了承を得た所のみ公開が許されている。

どうやらこの彩夏ちゃんは隠したがりらしく殆どの項目が閲覧不可になっていた。

……まあ次元使いの娘としての権限を振りかざせばこの程度のプロフィールなら先生方にお願いして見ることも出来る。

でもこんな些細な事に使ってられないし、公開したくない情報をわざわざ暴く趣味もない。

 

「あっ、魔力測定2Cなんだ……」

 

外来の魔法使いにしては低い数値だ。

正直に言えば序列試験では活躍できないぐらいのレベルだろう。

余程の苦労をして、作戦を入念に準備しないと序列試験では勝てそうに無い。

ましてや外来の魔法使い、前のような試験がもう一度あればすぐに標的にされてしまうだろう。

しかし……っとここで疑問が浮かび上がる。

何故魔法経験は隠しているのに魔力測定だけは隠していないのだろうか?

何か理由があるのか、それとも何かの手違いなのか。

だけど―――名雪には軽い既視感があった。

まるで自分が無能だと知らしめているようなこの隠し方。

わざわざ他の項目は殆ど隠しているにもかかわらず自分の弱点のような部分だけを晒す意味。

それはまるで、自分自身への興味を無くそうとしているかのように。

 

「まぁ、偶然だよね」

 

そう考え直し私は軽く苦笑する。

何を考えているのだろう、まるで私に似ているなどと。

勝手な仲間意識持って、私には何の意味の無い事の筈なのに。

故意だろうと事故だろうと、どちらにしても私にはそこまで関わりない事項だろう。

だからこそ私は変な考えを捨てる。

……っと、丁度良く前から歩いてきた少女を見つけた。

顔を見て、そして手元にある写真にもう一度目を通す。

どうやら途中入学生が来たらしい。

真新しい制服に身を包んでいて何処か余所余所しい。

長い黒髪が特徴的で、体は小柄、腰には何の剣のようなものを帯刀している。

目は鋭く何かを警戒しているような雰囲気が漂っていた。

……まるで何かを探すように、まるで何かから追われているように。

 

「彩夏……さん?」

「はい、上杉彩夏といいます、どうぞよろしくお願い致します」

「よろしく〜、私は名雪、水瀬名雪だよ〜」

 

私はそう言いながら笑った。

そんな私に対して彩夏ちゃんも軽く微笑を浮かべる。

……うわっ、美人さんだ。

可愛いとは言い難く、どちらかと言うと美しい部類に入る。

言ってみれば栞ちゃんタイプじゃなくて香里タイプ。

まるで彫刻のような整った顔が芸術品のように笑った。

 

 

 

 

「えっとね、こっちが第1食堂……他の食堂に比べて出てくる時間が遅いけどその分手が込んでる料理が食べられるよ〜」

「それは楽しみですね」

「こっちは魔法演習場、二年生は大抵ここを使うよ」

「成る程、教室から一番近い所にあるんですね」

「あそこは開かずの間、昔生徒が悪戯で特殊な魔法をかけて一室封印処理したらしいよ」

「随分手が込んだ悪戯ですね」

 

このような調子で学園内の案内は続く。

彩夏ちゃんは大抵聞き手で質問してくる事はまず殆ど無かった。

まあ質問する内容すら思い浮かばないのが現状なのかもしれない。

まったく知らない場所を案内させるのに確かに最初は指示に従った方がいい場合が多い。

そして大抵見飽きた所で初めて質問した方が効率的である。

そんな事を知ってか知らずか案内は私の思った通りに進んでいく。

どうやらこの分なら早めに案内が終わりそうだ、よかったよかった。

 

「時に名雪さん? あれは何ですか?」

「えっ……あれ?」

 

彩夏ちゃんが指し示した方向、とある部屋の前に置いてある山だった。

雑多に積んであるだけのような本、本、本。

どうやら誰かがここに置いてきぼりにして何処かに行ってしまったらしい。

……本の質なんかを見るにどうやら図書室の本だらけらしかった。

カノンでこんな風に魔道書を扱うなんて普通じゃ考えられない。

運んでる最中に余程の急用が出来たのか、それにしてもこの数は尋常じゃなかった。

下手をすれば30冊、いやもっとあるかもしれないぐらいの量。

兎に角こんな所に本を置いておくのはルール違反だ、私は軽く苦笑して彩夏ちゃんを見る。

 

「ごめんね、ちょっと片付けなきゃいけないみたいだから……多分後の紹介しなくちゃいけない所はもうないと思うよ」

 

そう言って私は積んである本の山へ向かう。

それにしても何故これだけの魔道書が必要なのだろうか。

こんなに多く借りても読めるはずがない、効率を重視するならこんな事をする必要は無いはずだが。

 

「まあしょうがないよね」

 

目の前に山がある事は事実、認めようと認めなくとも否定のしようはない。

私は一冊本を取って何処の図書室から借りられた物なのか調べた。

どうやらそんなに遠い図書室ではないようだから三往復ぐらいで済むだろう。

まあ本当は魔法で運べればいいのだけど、魔道書にはそう言う類の魔法が聞かないことが多い。

自己防御結界でも張っているらしく、こういう時には不便な本である。

 

「よい……しょっと」

 

取りあえず10冊ぐらい抱えて私は立ち上がる。

意外に重みがあり、どうやら一回の往復ではこれが限界数のようだ。

……っと、ふっとすぐ隣を風が通りすぎた。

 

「あれ? 彩夏ちゃん?」

「手伝います、この量では手間がかかるでしょう」

「え……でも悪いよ」

「構いません、これも鍛錬の一つと考えます」

 

そうぶっきらぼうに言って彩夏ちゃんは魔道書を抱え始めた。

私より小さな体だが、意外に力持ちだったらしく次々に魔道書を手に取る。

……12冊ぐらいを無理して持っている所を見ると負けず嫌いなのかもしれない。

 

「それで、これは何処に運べばいいでしょうか?」

「あっ、今案内するよ〜」

 

そう言って私は彩夏ちゃんより少し前に出て歩き始める。

彩夏ちゃんもそんな私の行動を見て、理解したのか黙って後を付いてきた。

階段を上り下りする必要が無い為そんなに大変な作業では無い。

だけどそれを嫌な顔せずに手伝ってくれた彩夏ちゃんには少し好感が持てる。

 

「そう言えば彩夏ちゃんは属性って何?」

「私ですか? 一応炎と雷となってますね」

「二色なんだ、凄いね〜」

 

人にはそれぞれ自分の適性に合った属性が必ず存在する。

例えば香里は炎だし、祐一は風の属性な筈だ。

確か北川君も風だった筈、大抵の人間は一種類程度は自分の属性を持ち合わせている。

しかしこれはあくまで目安であり、その属性の魔法しか覚えられないというわけではない。

ただ単に波長が合いやすい属性なだけで他の魔法とそれほど変わったりはしない。

だけど自分の属性を知ることで分かる事も多くなるのは事実だ。

そして稀に彩夏ちゃんのように属性が二種類、多い人で三種類持っている人もいる。

まあこれだけで優劣が決まるわけではないのでちょっとお得な特典といったところだろう。

でも無いよりは有った方がいくらか他者より優れているのは確かな事だ。

 

「そういう名雪さんの属性は?」

「私は属性ないよ、魔法使いとしては落ちこぼれだからね」

 

属性が一つも無い人間も存在する。

まあ魔法を使う際に何も気にせず行使出来るのだからある意味万能だ。

だけど特化したものが無い者は単一での戦闘に向かない。

魔法使いとしては一流でも戦闘要員としては二流になってしまう場合もある。

まあ私の場合は属性が無いんじゃなくて有った属性を上書きしたと言った方が正しい。

 

「それは失礼しました」

「別にいいよ、話題を持ちかけたの私だし……って、あれ……祐一?」

 

驚いた、いつの間にか祐一が目の前に立っていた。

その後ろには何故か香里と栞ちゃんが一緒でこちらを驚いた表情で見ていた。

どうやら話に夢中になってしまい迫っていた気配に気づくのが遅れてしまったらしい。

それはどうやら祐一も同じようでここまで近づいてようやく私の気配に気づいたらしい。

 

「名雪か、どうしたんだ?」

 

祐一がそう言って不思議そうに私を見る。

だがそれは私が言う言葉のような気がする。

 

「それは寧ろ祐一に言いたいよ、入学したのに全然学園に顔出さないんだから」

「まあ色々事情があってな、人知れず頑張ってたんだよ」

 

それは知っている、実は祐一は知らないだろうけどここ最近の祐一の行動は情報として入ってきている。

暫くのハンター活動停止、そして今何をしているのか……など。

ちょっと神咲さんに頼んで、それから情報屋さんにもお願いした事もある。

まあ肝心な所はこれから本人に聞けばいいと思ったので深入りはしていない。

ただ大まかな行動ぐらいは知っているために、学園に顔を出せない理由も少しは思い当たる。

まあそれは兎も角として……一番気になることがある。

 

「後ろにいるのは香里に……栞ちゃん? 祐一と一緒なんだ」

「まあね、軽く模擬戦をして貰うことになってるの」

 

香里ははっきりとそう言った。

模擬戦、祐一と……微妙に私もしてみたい。

でも普通の戦いならいざ知らず模擬戦程度じゃ私も祐一もただ牽制程度で終わっちゃいそう。

この先有り得ない事だけど―――本気で戦った場合、私と祐一……どっちが勝つのかな。

……まあ起源者との戦闘なんて想定したくないけど。

 

「あ、そっか……もうすぐ序列試験だしね」

「そう言うこと、優先事項は早い内に片づけておく」

 

優先事項……ということは少なからず香里は祐一を敵視しているのだろう。

確かに祐一の魔法使いとしての実力は気になる。

中々のレベルではあると思うけど、正直カノン学園の中ではどうなのだろうか。

意外に序列生徒になれなかったりして……祐一。

私は苦笑しながら祐一を見つめる。

 

『大変そうだね』

『厄介事には慣れてる』

『頑張ってね』

『あぁ』

 

祐一と無言で目配せをして軽くエールを送ってみる。

この模擬戦の結果で祐一の魔法使いとしての実力が分かるかもしれない。

……まあ祐一が模擬戦でそう簡単に本気を出すとは思えないけど。

 

「――――――ッ!!」

 

刹那、祐一の手が無言で私に向けられる。

否―――違う、私の後ろに向けている?

まるで無意識、気配が少なかったために反応が遅れる。

祐一から魔力があふれ出ている。

今、私の後ろに居るのは……上杉彩夏。

そして気づく、極々少量の殺気……それが彩夏ちゃんから発せられている事を。

流石に私に対して発せられているわけではないようなので気づくのが遅れた。

だが……あぁ駄目だ、思考が追いつかない。

今にも祐一の手から魔法が放たれようとしている時に悠長に考えている暇は無い。

私が前に出て祐一を取り押さえるか―――却下。

まず成功率が低いし、そんな時間もない。

それじゃあ魔法に対して魔法で応戦するか―――却下。

廊下だし人目があるし第一祐一の魔法速度に今からじゃ追いつけない。

っと、私は手にして魔道書の存在に気づく。

……そうだ、これなら―――っ!!

思い立ったが、すぐに手に持っている魔道書から手を完全に放す。

魔道書が落ち、間抜けた音と共に床へと散らばった。

 

「あー、落としちゃったよ」

 

出来るだけ大きい声でそう呟く。

―――その瞬間、一瞬ではあるが二つの殺気が私に向けられた。

防衛本能で一瞬体が固まる。

流石にこれだけの殺気を二つも受けたらいくら私だって我慢のしようが……無い。

思わずこの場で魔力を解放しそうになるが、私は口の中で歯を噛み締め耐えきる。

 

「ちょっと名雪、何してるのよ」

「わ……大丈夫ですか、名雪さん」

 

香里と栞ちゃんはそんな私の元へと駆け寄ってきてくれた。

先程の受けた殺気は今は散らされている為に正直気が抜ける。

だがその安堵を悟らせない為に私は平気な振りをして笑顔でお礼をする。

 

「ありがと〜、香里に栞ちゃん」

 

だけど意識は常に二人に向けられていた。

次はどんな行動に出るか……っと気を張っていたがどうやら何か話し合っているらしい。

どうも友好的な雰囲気じゃないけれども……これ以上の行動は起こさないようだ。

 

「ほら名雪、本少し持ってあげるから……」

 

香里はそう言って散らばった本を数冊手に持った。

栞ちゃんはそれを見て、祐一と話し終わったらしい彩夏ちゃんの方へと駆けていった。

どうやら二人とも手伝ってくれるらしい。

私はその申し出を敢えて受け二人に手伝って貰うことにした。

流石に今頭が冷えているであろう彼らにこれ以上もめ事を起こして欲しくない。

その甲斐あってか私達はその後、無事に魔道書を図書室に届け終えた。

道中、祐一と彩夏ちゃんは露骨なまでに距離を置いていて何かあったことは間違いない。

……まったく損な役割だ、っと私は軽くため息をついた。

 

 

to be continue……

 

 

 

 

 

 

あとがき

空気を読まず三話−Uを更新。

多分結構速い更新だと自分で自負。

まあ暇だったからゲームの合間にちょちょいと書いてみました。

ToHeart2のSSが書きたい症候群、そんな気分。

でも書けない、書けたとしても短編だから意味もない。

脇役Love、まーりゃん先輩可愛いよまーりゃん先輩。

 

 

 

 

―――第二部・第三話−U★キャラクター辞典―――

 

【No.4】―水瀬名雪(18歳)―

職業:カノン学園二年生

得意属性:???

標準武装:大天使の杖

魔法経験:3B

魔力測定:2A